細菌とウイルスの違いは?大きさ?感染経路は?真菌とはどう違うの?
細菌とウイルスの違いって?意外と簡単?大きさの問題?
細菌とウイルスは、病気を引き起こすという意味ではよく似ているが、構造や性質の面では大きな違いがある。
細菌とウイルスの違いについて、まずは基本的なところから見ていこう。
違い①細菌は生きている
細菌とウイルスの決定的な違いはまず、「生きているかどうか」という点にある。
細菌は最も原始的な構造を持つ生物であり、細胞核と細胞膜を持っている。細胞は生命体であるため、外部の物質を細胞に取り込み、エネルギーを産出するという活動を行っている。
細菌もまた細胞を持っているため、細胞分裂を繰り返すことによってみずから増殖することができ、この意味でもウイルスとは大きな違いがある。
また、すべての細菌が人体にとって有害な作用をもたらすわけではなく、「善玉菌と悪玉菌という風に分けられている。
悪玉菌の代表としてはサルモネラ菌、歯周病菌、溶連性連鎖球菌などがあり、増殖する部位によって症状にも違いがある。
一方、善玉菌の代表にはビフィズス菌などの乳酸菌があり、効果的に摂取することで腸内環境を改善することができると言われています。
違い②ウイルスは自分で増えない
細胞分裂を繰り返してみずから増殖することができる細菌とは違い、ウイルスは自分の力だけで増えることができない。
そもそも、ウイルスは細菌とは違い生物ではなく、生物に必要な細胞核も細胞膜ももっていない。
ウイルスは遺伝子情報のみを持った個体であり、生きた細胞の内部に入り込み、その細胞のDNAを破壊し、みずからのDNAに置き換える、という形でどんどん増殖していく。
違い③大きさは?
細菌とウイルスは大きさにも違いがある。細菌の大きさは1マイクロメートル(1mmの1000分の1)程度であり、一般的な顕微鏡で確認できる。
一方、ウイルスは細菌よりも小さく、基本的な大きさは1ナノメートル(①マイクロメートルの1000分の1)程度であり、細胞内にとりついてみずからの遺伝子をコピーしていく。
細菌とウイルスの違いを利用した治療方法がすでに確立されており、細菌のみを破壊できる治療薬などが日本国内でも実用化されている。
違い⑤引き起こす病気
細菌とウイルスでは、引き起こされる病気にも違いがある。基本的に、「細菌性」と頭につく病気は細菌感染によって引き起こされ、ウイルス性の病気とは区別されている。
代表的な細菌としては、黄色ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、炭疽菌などがあり、細菌によって引き起こされる病気には、O-157、破傷風、結核、感染性胃腸炎などがある。
一方、ウイルスにもさまざまな種類があり、ロタウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなどの一般的なものから、コレラウイルスやペストなど、日本国内ではすでに撲滅された感染症も含まれている。
細菌とウイルスの違いを感染経路から考える!
細菌とウイルスの基本的な違いを理解したところで、ここからは感染経路の違いについて詳しく見ていきたい。
感染経路に大きな違いはない?
細菌とウイルスには、感染経路という意味では大きな違いはないと言われている。
一般的に、病気の感染経路には、空気感染、飛沫感染、血液感染、粘膜感染などがある。インフルエンザや世界中を震撼させたペストは空気感染による感染症であり、感染力も比較的強いと言われている。
エイズウイルスは粘膜感染、血液感染によってうつる病気であり、空気感染や飛沫感染ではうつらないことが知られている。
このように、感染経路の違いについて具体的に把握しておくことで病気を正しく予防することができ、より深いレベルで理解することにもつながる。
増殖スピードの違いは?
細菌とウイルスには、増殖スピードという意味では大きな違いはない。どちらもみずからを複製することで生き永らえ、個体数が一定数以上を超えると特有の症状が表れる。
ただ、細菌もウイルスも、それぞれの種類ごとに増殖スピードの違いがあり、増殖が速いほど人間にとって恐ろしい細菌・ウイルスであると言える。
なお、細菌やウイルスの増殖スピードの計算には指数対数が用いられ、基本的には、「2倍に増殖するまでに何時間かかるか」という指標によって測定される。
季節や地域、宿主の栄養状態によっても細胞やウイルスの増殖スピードには違いが出るため、こうした要素から病原体の弱点をあぶり出し、ワクチン・治療薬の開発につなげるのも医療に課せられた指名である。
細菌とウイルスは治療法にも違いがある?風邪はどっち?
細菌とウイルスでは、治療方法にも違いがあるのだろうか。風邪やインフルエンザの違いについてもおさえておこう。
ウイルスに抗生物質は効かない
意外と知られていない違いかもしれないが、原則として、ウイルスに抗生物質は効かない。抗生物質はあくまでも細菌を殺すための物であり、ウイルス性の疾患に使用してもまったく効果がない。
細菌とウイルスでは基本構造に違いがあるため、たとえばインフルエンザの治療に抗生物質を処方することはできないし、服用したとしても意味がない。
ただ、ここ数年では医療の進歩により、細菌とウイルスの両方に効果を発揮する治療薬が開発され、治療の選択肢がよりいっそう広がっている。
細菌にワクチンはない?
ウイルス性の感染症とは違い、細菌性の感染症については、基本的にワクチンを作成することができない。
ワクチンの本質は「無毒化されたウイルス」であり、ウイルスをあえて殺し、不活化したものを体内に投与することで免疫細胞にウイルスの型を記憶させ、強制的に抗体をつくらせるための物である。
したがって、現代の医療水準では細菌のワクチンを作ることはできず、自然免疫の獲得に期待するしかないのが現状である。
どっちも自然に治る?
細菌もウイルスも時間の経過とともにいずれは体外に排出され、残存個体が一定数以下にまで減少すれば症状も徐々に治まってくる。これが自然治癒である。
風邪やインフルエンザなど、比較的軽度の感染症であれば自然治癒でも良いのかもしれないが、エイズやエボラ出血熱など致死率が非常に高く、ウイルスが長期間にわたって体内に居座るような感染症の場合は自然治癒の前に宿主が死亡してしまうリスクが高いため、ワクチンや薬を投与して治療を行う必要がある。
新型コロナはどっち?
日本でも猛威をふるっている新型コロナは、風邪のウイルスの変種である。コロナウイルスは一種の総称であり、ライノウイルス、アデノウイルスなどと同じカテゴリに分類されている。
新型コロナウイルスの医学的な正式名称はCOVIDであり、日本でもこれまでにSARS、MERSなどのコロナウイルスが確認されている。
コロナウイルスの中でも致死率や感染力には違いがあり、今回の新型コロナウイルスは感染力の面ではやや強力であると言われている。
細菌でもウイルスでもない!真菌との違いって?
細菌やウイルス以外に病気を引き起こす物としては、真菌がある。ここでは、真菌と細菌・ウイルスとの違いについて見ていこう。
真菌との違いは?
真菌も細胞によって形成される原始的な生物であり、その意味では細菌と大きな違いはない。
ただ、細菌やウイルスとは違い、真菌は生きている細胞に寄生し、直接エネルギーを吸い取ることによって機能を維持する性質があり、その意味ではウイルスと大きな違いがある。
細菌とウイルスの違いを知って病気をきちんと理解しよう!
細菌とウイルスには、大きさ、基本構造、感染経路などの面で違いがある。それぞれの違いについて詳しく理解しておくことによって病気についての知識も深まり、「正しく恐れる」ことにもつながる。
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