朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』を読んで

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ライター:立石芳樹

朝井リョウ著『世にも奇妙な君物語』を読了。朝井リョウさんといえば、この5月にも小説「チア男子!」が映画化されるなど、まさに乗りに乗っている小説家のひとり。今回もきっとワクワク、ドキドキさせてくれるはずだ、と期待して読み進めたら、何と、期待以上の読後感に大満足!

『世にも奇妙な君物語』は、5つの短編から構成されています。ストーリーのジャンルも多彩で、ホラー、サスペンス、ミステリー、コメディと、まさに本家の「世にも奇妙な物語」の完璧なオマージュとなっている作品です。

個人的に「なるほど!」と思ったのは、冒頭の「シェアハウさない」ですね。ひょんなきっかけから路上で女性に助けられ、そのまま女性のクラスシェアハウスに入居することになったライターの主人公。はじめのうちは和気あいあいとした関係を楽しむ主人公であったが、次第にシェアハウスの入居者たちが背負う深刻な過去が明らかになっていく……。

シェアハウス、という時代を切り取るキーワードを巧みに取り入れながら、「奇妙な物語」として上質なサスペンスに仕上げる朝井リョウさんはさすがの力量です。

また、ラストに収録されている「脇役バトルロワイヤル」もおすすめ。それまでの4編はこのための伏線になっていたのか、という驚きの展開で、1回で2回分、いや、それ以上の満足感が得られます。