ネタバレあり!映画『最強のふたり』のあらすじと見どころ!感想も!

2019年7月29日フランス映画, 介護, 障害

 2011年にフランスで制作された映画『最強のふたり』。後天性の障害により全身が不自由になった男性と介護経験のない黒人青年との日常を通して、障害とは何か、人種とは何か、本当の意味のバリアフリーとは何かを問いかけます。東京国際映画祭に出品されたことでも話題になりました。

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作品タイトル 「最強のふたり」
制作年 2011年
劇場公開 2012年9月1日
製作国 フランス
監督 エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ
脚本 エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ
キャスト フィリップ フランソワ・クリュゼ
ドリス オマール・シー

 

映画『最強のふたり』のあらすじまとめ!

新しい介護士を募集しているフィリップフランソワ・クリュゼ)のもとに、ドリスと名乗る黒人の青年(オマール・シー)が訪ねてくる。彼は宝石強盗の罪で半年間服役しており、刑務所を出たあとは生活保護でかろうじて食いつないでいたのだった。

生活保護の期限を延長するため、かたちだけの就職面接に訪れたドリス。面接でもフィリップに無礼な態度を繰り返し、わざと不採用通知を出すように仕向けるドリスだったが、何とフィリップからの返事は「採用」の一言。

フィリップは周囲の反対を押し切ってドリスを新しい介護士として雇い、身のまわりのケアをまかせることに。

はじめは慣れない介護生活に戸惑い、常識では考えられないミスを連発するドリスだったが、フィリップは彼の破天荒な人柄を認め、次第に親友同士として打ち解けはじめる。

互いのバックボーンを語り合ううち、フィリップドリスに、障害のせいであきらめざるを得なかったある夢を打ち明ける。フィリップの願いがまだ消えていないことを察したドリスは、持ち前の破天荒精神でひとつの「無謀すぎる計画」を決行するのだった。

映画『最強のふたり』のネタバレと評価!

フィリップドリス。まったく異なるバックボーンを持つふたりの日常を描きつつそれぞれの背景を徐々に明らかにしていく、という構成の『最強のふたり』

実は、フィリップには何年もの間ひそかに恋焦がれている文通相手がおり、ドリスフィリップを彼女のもとに無理やり連れていく、というあたりがこの映画のクライマックスになっているのですが、そこに至るまでにもうひとつ、ふたりの間にはとてつもなく大きなイベントが起こっています。

介護士の仕事にもどうにかこうにか慣れてきたドリスのもとに、ある日、予期せぬ来客が訪れます。

その来客とは、ドリスの弟でした。麻薬の密売に関わっていたドリスの弟はあるミスをきっかけに組織から追われる身となり、行き場を失った挙句ドリスのいるフィリップ邸まで転がり込んできた、ということでした。

この一件をきっかけにドリスのバックボーンについて詳しく知ることになったフィリップ。弟の件がひとまず落ち着いた後、フィリップドリスをもともとの家族のもとに戻す決意をします。それはフィリップにとっても、ドリスにとっても後悔の残る決断でした。

新たに介護士を雇い入れ、ドリスとの日常をキレイに忘れたかのように見えるフィリップ。しかし、ドリスのいなくなった真面目すぎる(そっちのほうが普通なのですが)毎日はフィリップにとって味気なく、何の実感もないものでした。

フィリップの無気力ぶりを見かねた周囲の介護士は、苦肉の策でドリスをもう一度だけ呼び戻すことに。顔は無気力。無精ひげは伸び放題。フィリップの変貌ぶりの理由を知っているドリスは、一念発起して彼を遠く離れた土地にいる文通相手のもとまで連れていく決意をします。

はじめのうちはさすがに無謀だと渋っていたフィリップでしたが、ドリスらしい粋なやさしさを最後には受け入れ、長年憧れていた彼女に会いに行くことに。

積年の夢を見事にかなえたフィリップ。彼はその後もドリスを介護士として雇いつづけ、『最強のふたり』として人生の壁を次々と乗り越えていくのでした。

映画『最強のふたり』の見どころは?

これまでの「福祉映画」の枠にとどまらない映画『最強のふたり』には、皆さんにぜひともチェックしていただきたい見どころがたくさんあります!

これぞフランス!ぎりぎりアウト?のブラックユーモア

「重い障害をもつ男性と黒人青年との交流」。キャッチコピーだけを見ると、いかにもハートフルで心あたたまるコメディ映画を思い浮かべるかもしれませんが、はっきり言います。『最強のふたり』を観るのなら、そんな先入観は捨ててください。

いや、コメディ映画という点は間違いないのですが、映画のなかに出てくるのがどれもこれもブラックユーモアばかりで、日本映画に慣れている方にとっては「これ、笑っていいの?」と戸惑ってしまうかもしれません。

洗髪用のクリームと脚に塗るクリームを逆につけたり、フィリップの浣腸を露骨に嫌がったり、下半身の感覚がないフィリップの脚にわざと熱湯をかけて楽しんだり……フィリップに対するドリスの振る舞いはときに不謹慎で無神経で、そして無遠慮です。おそらく、実際の介護現場でドリスのようなハチャメチャな介護士がいたら、1日どころかたったの半日でクビになっているでしょう。

けれど、フィリップはそんなドリスのあやうさに振りまわされながらも、彼を介護のプロとして心の底から信頼し、命を委ねつづけます。それはなぜなのか。

「これまでに接してきた他人のなかで、ドリスだけが僕に同情しないんだ。少しの遠慮だってしていないんだよ」

ドリスの犯罪歴を聞かされ、1日でも早くほかの介護士を雇ったほうがいいと忠告されたフィリップが口にするセリフです。このさりげないセリフにこそ、フィリップドリスを根底のところで信頼し、認めている理由が込められているのではないでしょうか。

前科者への哀れみでも、行き場を失った者への同情でも、ましてや「介助してもらっている」という卑下でもない。ただただ純粋にドリスのピュアな人間性に惹かれ、親友だと認め合っているからこそ、フィリップは彼を介護士として雇いつづけ、対等な関係をキープできたのです。

恋には奥手なフィリップ

物語の中盤で、エレオロールという女性と何年も文通していることを打ち明けるフィリップ。映画のクライマックスでは彼女とのデートが実現するわけですが、彼女と会うまでにも実は、彼なりの不安と葛藤がありました。

会いたい、でも、会えば嫌われてしまうかもしれない……自分が障害者であることから恋愛に奥手になるフィリップの心理には、障害をもつ人すべてが抱える恋愛の悩みが凝縮されています。

手紙にはさまれたエレオロールの顔写真を見ながらモジモジ、イジイジするフィリップはまるで初恋を覚えたばかりの少年のようで、もどかしくもあり、共感度抜群でした。

介護のプロに絶対観てほしい!

大学で真面目に介護を学び、介護のプロとして真面目に働いている方々から見れば、ドリスは介護職として失格に見えるかもしれません。

確かに、ドリスの介護技術は時としてアマチュア以下で、フィリップに対する言動は表面的には差別的でさえあります。

けれど、ちょっと立ち止まって考えてください。「夜の空気を感じたい」と訴えるフィリップのためにわざわざ深夜の散歩をつづけたり、フィリップを荷台に乗せようとする第三者に本気で怒ったり、フィリップのささやかな恋を実らせるためにわざわざ遠く離れた土地まで車を飛ばしたりできる介護のプロが果たして、どのくらいいるでしょうか。

もちろん、彼の振る舞いのすべてが正解だとは言えませんが、ドリスの破天荒さとフィリップのピュアさは「人間の尊厳とは何か」について考えるヒントを与えてくれます。

映画『最強のふたり』の全体の感想

重い障害をどこまでも前向きにとらえる男性と、複雑なバックボーンにも押しつぶされずに生きる黒人の青年。まさに『最強のふたり』が織りなすハートフルヒューマンコメディ。「この映画のテーマは何だろう」と難しく考えず、フランス映画ならではのウィットやブラックユーモアをお楽しみください!

後日談として……ドリスは現在、大企業の社長として財産を築き、フィリップエレオロールと無事結婚してふたりのお子さんを授かったそうです。

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作品タイトル 「最強のふたり」
制作年 2011年
劇場公開 2012年9月1日
製作国 フランス
監督 エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ
脚本 エリック・トレダノ
オリビエ・ナカシュ
キャスト フィリップ フランソワ・クリュゼ
ドリス オマール・シー