ネタバレあり!映画『万引き家族』のあらすじと見どころ!感想も!

2019年9月5日ノベライズ, ヒューマンドラマ, リリー・フランキー, 安藤サクラ, 是枝裕和, 松岡茉優, 樹木希林

カンヌ国際映画祭に出品されたこともあり、公開前から日本中で話題となっていた映画『万引き家族』。万引き、という非合法な手段でしかつながることのできない疑似家族の日常にスポットをあて、是枝監督らしいリアリズムによって現代社会の孤独と閉塞感をあざやかに描き出しています。カンヌ国際映画祭・コンペティション部門に出品された本作は、今村昌平監督『うなぎ』以来21年ぶりとなるパルムドール賞を受賞しました。

作品タイトル 「万引き家族」
制作年 2018年
劇場公開 2018年6月8日
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
ノベライズ 「万引き家族」(是枝裕和著)
キャスト 柴田治 リリー・フランキー
柴田信代 安藤サクラ
柴田亜記 松岡茉優
宮部希衣 池脇千鶴
川戸頼次 柄本明
柴田初枝 樹木希林

映画『万引き家族』のあらすじまとめ!

工場勤めでわずかな収入を得る柴田治(リリー・フランキー)は、柴田信代(安藤サクラ)、柴田亜記(松岡茉優)、柴田初枝(樹木希林)、柴田祥太(城桧吏)とともにひそやかな共同生活を営んでいた。

都市の文明に置き去りにされたかのような古びた家屋でひっそりと、肩を寄せ合いながら暮らす彼らは、「万引き」という非合法な営みによって命をつないでいる疑似家族であった。

ある日の夕暮れ、治と祥太は散策の途中、寒空のなか玄関先に放置されている薄着の少女を見かける。泣きじゃくる少女を放っておけない治は、少女を家へと連れて帰り、「ゆり」と名づけてしばらく一緒に暮らすことに。ゆりは両親から日常的に虐待を受け、心を閉ざしていたのだった。

ゆりも次第に治たちとうちとけ、疑似家族ながらも絆をさらに深めかけていた矢先。ある事件をきっかけに6人の関係が少しずつ壊れはじめ、治たちは「疑似家族」という最後の拠り所さえも失っていく。

映画『万引き家族』のネタバレと評価!

万引きという犯罪を繰り返し、客観的に見れば社会の底辺にいるように見えながらも、ささやかな楽しみを拠り所に笑いあって暮らしていた治たち。

しかし、祥太とゆりが万引きに失敗したことをきっかけに彼らの存在が世間の目にさらされ、ワイドショーなどで激しく糾弾されることに。そして、唯一まとまった収入をもたらしていた初枝が死亡することで、共同生活の屋台骨が根底から揺らぎはじめます。

さらに、ゆりの両親が誘拐事件として被害届を出したことから、警察が本格的に捜査に乗り出し、治たちは取り調べを受ける身になってしまいます。

そして、警察の追及は、数か月前に亡くなっているはずの初枝の行方におよび、その過程で治と信代が過去の死体遺棄事件で結びついていることが明らかになってしまいます。信代はかつて自分の夫を殺害し、その死体の処理を治が手伝ったことから現在の関係が生まれたのでした。

警察の介入によってこれ以上「疑似家族」でいられなくなった治たち。結局、信代ひとりが少女誘拐と死体遺棄の罪を背負って刑務所に入り、疑似家族は一気に崩壊。

その後、ゆりは両親のもとに戻され、その他の4人もそれぞれの居場所を何とか見つけ、新たな暮らしを細々とつづけていくのでした。

是枝監督らしいリアリズムが光る本作は日本ばかりでなく海外でも高く評価され、フィクションでありながら日本の現実を忠実に切り取っているドキュメンタリー映画として絶賛されています。

映画『万引き家族』の見どころは?

豪華キャストが集結した映画『万引き家族』には、是枝作品にあまりなじみのない方にもぜひお伝えしたい見どころがたくさんあります。

これぞ是枝的リアリズム!

「万引きによってかろうじてつながる疑似家族」という一見すると非現実的なモチーフを設定しつつ、現代社会が抱える社会の闇をするどいタッチで切り取った是枝裕和監督。

『海街diary』でも感じましたが、是枝監督はストーリー展開や人物描写はもちろんのこと、物語全体を貫く世界観の作り込みがとんでもなく得意なんですよね。『万引き家族』でもその手腕は存分に発揮され、細かいカメラワークからも、「このテーマをどうしても伝えなければ!」という気迫が感じられました。

徹底的にこだわり抜かれた力作だからこそ、世界的に高く評価されるんですね。

ほんわかとするユーモア!

リアリズムを追求する是枝作品ということで、映画を観る前は「きっと重いテーマで笑えない映画なんだろうな」と思っていました。

けれど、それはたんなる誤解でした(是枝監督、ゴメンナサイ)。派手さこそないものの、『万引き家族』には思わずクスリとさせられるユーモアがところどころに散りばめられており、「観る人を少しでも楽しませよう」という是枝監督らしいサービス精神が感じられます。

不意にふたりきりになっていい感じになった治と信代が急に祥太とゆりが帰ってきてあわてるシーンはコントのようでもあり、映画館で笑いをこらえるのが大変でした。

池脇千鶴の存在感

治たち「疑似家族」の日常を丁寧に描く前半部分から一転、物語の後半では6人が外部の価値観にさらされ、容赦なく糾弾されていきます。

治たちを取り調べる警察官・宮部希衣を演じるのは池脇千鶴。『万引き家族』のMVPを選ぶとしたら、やっぱり池脇千鶴ですね。

後半部分では、治たち疑似家族が抱える「現実」が世間の「常識」によって打ちくだかれていく、という構成になっています。この「常識」をリアルに体現しているのが池脇千鶴であり、宮部希衣なのです。

「なぜ、少女をすぐに帰さなかったのですか」
「万引き以外の方法で暮らしていくことを考えなかったのですか」
「少女の家族にかけたい言葉はありますか」

希衣が治たちに投げかける言葉はそのひとひとつが世間の「常識」であり、「まっとうな価値観」です。

もともと脆かった治たちの絆は世間の常識、良心、法律によって否応なく裁断され、あっけなくかたちを失っていきます。

池脇千鶴のおさえた演技は、世間の常識を代弁していると同時に、この国が抱える現実を映し出す合わせ鏡になっているのです。

映画『万引き家族』の全体の感想

日本映画では21年ぶりのパルムドール賞受賞となった映画『万引き家族』。重いテーマながらもシリアスになりすぎず、ほどよいユーモアによって息抜きができる作品に仕上がっています。是枝作品の入門編としてもぜひおすすめです!

作品タイトル 「万引き家族」
制作年 2018年
劇場公開 2018年6月8日
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
ノベライズ 「万引き家族」(是枝裕和著)
キャスト 柴田治 リリー・フランキー
柴田信代 安藤サクラ
柴田亜記 松岡茉優
宮部希衣 池脇千鶴
川戸頼次 柄本明
柴田初枝 樹木希林